大阪高等裁判所 昭和58年(う)404号 判決 1983年6月23日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人山上益朗作成の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官高橋哲夫作成の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。
論旨は、量刑不当を主張するものである。
そこで、所論及び答弁にかんがみ、記録を調査して検討するに、本件は、知人から依頼されていた交通事故の示談交渉過程において、原判示のような相手方保険会社及びその顧問弁護士を侮辱する内容のビラ一二枚を、右保険会社の支店のあるビル一階に無断で貼付したという侮辱及び軽犯罪法違反の事案であるが、右犯行は過大な損害金の要求に見合う保険金の支払に応じなかつた相手方の態度に腹を立てるとともに、圧力を加えて今後の示談交渉を有利に進めようとして敢行したものであり、被告人に対する相手方らの対応については特にこれという落度があつたものとは認めがたいので、犯行の動機、原因において同情すべき点はなく、知人ら二人を誘つたうえ、予め印刷していた相手方らの社会的地位を著しく軽蔑する内容のビラを五〇〇枚も携行して本件犯行に及んだものであつて犯行態様も悪質というほかなく、それに加え被告人の前科前歴を併せ考えると、被告人の犯情は軽視しがたく、被告人の反省態度を考慮しても、被告人を拘留二五日に処した原判決の量刑は相当であつて、不当に重いものとは認められない。論旨は理由がない。
よつて、刑訴法三九六条を適用して主文のとおり判決する。